『経営してんのに借金するなんて金ないの?バカじゃん』融資を受けることがどういう意味を持つかわかってる?

お金があるに越したことはないし、借入せずに自分だけで全て賄えたらその方がいいのかもしれませんが、『借り入れをする』ということがどういったことなのか考えた事はあるでしょうか。バイト先の仲間や、あまり経営のことを理解していない人は、だいたい『借金=金がない=恥=大したことないことやってるから金がないんだろ』と言ってきます。でも、本当にそうなのでしょうか?

上場している大企業などでもホームページなどに取引先銀行などといくつもの銀行名が記載されており、中小企業でも取引先銀行として記載している企業は多くあります。わざわざ自らの恥を大々的に告知しているのでしょうか?

もちろん経営方法が悪ければ資金が立ち行かなくなるのは当然ですが、依頼を受け仕事に着手しても、すぐに入金があるとは限りません。依頼元によっては翌月・翌々月の入金となる場合もあり、会社により設定が異なります。

とある月に翌々月入金の依頼が立て込み、さらに現調が多く今月入金見込みの金額では支払いがやばいかも…ということもありうること。前もって貯金に回していればそれで賄うこともできますが、個人事業主で、さらに腕だけで仕事をとり、仕事量に大きな波がある人にとっては死活問題です。どんどん手元の金が減ることへのストレスは計り知れません。

仕事の依頼があるのに、こういったことで資金のやりくりがうまくできなくなると、いわゆる資金ショートという状態になります。黒字倒産です。それを防ぐために融資が活躍します。

事業をしていれば、仕事の取り方や状況によって、仕事はあるけど資金が足りなくなりそう というケースは少なくないのです。こういったことを防ぐために前もって業績が上り調子な時期に融資を受けておく人もいます。事業はそのようなさまざまな工夫をすることで続いているのです。

融資先も様々で、メガバンクをはじめ日本政策金融公庫、地方銀行など探せば多くヒットします。が、申し込んだからといって簡単に貸してくれるわけではありません。当然返済比率、希望融資額を利息合わせて月換算した場合の返済額、事業計画書の提出、経営者としての人となり、事業にどれだけの思いを持っているかなど、多くのことを見られ、調べられて審査されます。メガバンクはその中でも非常に難しいとされています。一昔前は特にメガバンクとの取引はステイタスとなっていました。メガバンクが貸してるならうちも貸しますと、スムーズに話が進むことも未だにあります。

面白い話ですが、一見借り入れを全くしてこなかった人の方が、借り入れ経験がある人に比べて信用できると思いがちですが、この場合には借り入れ経験がある人の方が信用があると判断されます。借り入れをし、返済してきた経験があるというところで加点されるようです。住宅ローンも同様に、クレジットカードなど全く使ったことない人は、ホワイトすぎて大丈夫?というふうに見られるのだとか。

このようなこともあるので、本当に必要になった時のために少額でもいいから融資を受けておくと、次回大きな額を借りたい時にスムーズに手続きできます。

融資を受けることができるということは、きちんとわかっている人が見れば

  • 税金を滞りなく収めてきた証拠
  • 確定申告もしっかり行っている
  • 提出するよう言われたものをきちんと揃えることができ、事業としてきちんと続けている会社

など、会社としてしっかりしているか判断することもできます。特に個人事業主は『どうせ税金わざと少なくなるようにして儲けてるんだろ』と言われやすい立場。取引先銀行を記載することで『うちはきちんと治めるもん納めてるけど文句ある?』と堂々と言うことができるのです。

個人事業主でもメガバンクからの融資を受けることはできます。売り上げが何千万もなくたって、受けることができます。ここ最近は小規模事業者への融資のハードルもだいぶ下がったように感じます。そのぶん、メガバンクからの融資歴があるからといって、何も変わることもないですが、ほかの銀行からはある程度借りやすい傾向があります。メガバンクで少額融資を受けて信用や実績を作り、本当に必要になった時には地方銀行などで多めに借りる…というのも一つの戦略かもしれません。

一般的には自分で仕事を取り経営者だと名乗ると、非常にお金持ちで金に困ってなくぼろもうけしているイメージを持たれますが、個人事業主からすれば、『経営してんのに借金するとかバカだろ』と、ネットから拾ってきたような浅い知識でものを言ってくる人に対しては、『この人は本当に経営について何も勉強してないんだね。知識なさすぎ』と思われ陰で笑われていると思ったほうがいいでしょう。確定申告というものもきちんと知らないくせに『全部経費にできるからずるしてるんだろ』なんてわかったようなこと言うんじゃない。

ただ金を吹っかけて儲けて事業が成り立つと思っているのであれば、やってみればいいのにと思います。自分の腕で勝負し、それで10年続けられる人は果たしてどのくらいいるでしょう。そういう覚悟のない人ほど、人のことをとやかく評論家並みに語ってくるのです。相手にするだけ時間の無駄です。

ネットが普及したことにより、どうも重箱の隅をつつくような、『でもどうせ○○だろ?』とつっかかることを言う人が非常に多い印象を受けます。そんなに自分のほうがうまくやれると思っているのなら、ネットを駆使してどうぞご自身で経営してみましょう。きっと初年度から売り上げも高く、高額の税金も納めることで国が潤います。

開業支援融資など、事業を始めて日が浅い事業者に対しては特殊な融資を受けることもできます。が、これはある程度の覚悟が必要だと考えたほうがいいでしょう。

個人事業主の事業における生存率について調べたことはあるでしょうか。個人事業主が事業を始めた場合、

1年後 72%

3年後 50%

5年後 40% 

このように5年後には事業者の半分以上が廃業となっています。10年後の生存率はなんと26%。2割の事業者しか生き残っていないことになります。

なぜこういうことになるのか?

事業を始めて3年目が分岐点ということはよく言われていますが、この時期に廃業する事業者が多いのは、用意していた資金がなくなることによる経営悪化が非常に多いのです。事業計画もなく、開業支援融資を受けれるから始めようと安易に開業し、結局経営方針も定まらず、安易な仕事の受け方をしていたことで陥ってしまうのです。開業支援融資はこの点が落とし穴だと言えます。使い方を間違えば廃業街道まっしぐらなのです。

極論を言えば、そんなに儲けがなくても支払いが滞らないように働いていれば廃業する必要なんてないのです。固定費をいかに削減し、例えば足りなくなりそうな場合には、バイトをして賄えば済むくらいの金額で押さえておけば、廃業なんてする必要はありません。事業を始めようとお金を借り、それで無駄に高い事務所を借りたり高い買い物をしてしまうから、どんどん固定費が高くなってしまうのです。個人事業主は個人である程度自由に働くことができるので、それを利用しない手はないのです。

このように段取りをとるためには、最初から融資に甘えるのではなく、どのくらい毎月の支払いがあり、どれだけの固定費がかかっているのか、無駄はないかなど把握できていなければいけません。そういう意味では、自分で確定申告書を作ることは無駄なことではないのです。事業計画も考えず、足りないからという理由で安易に資金を借りようとする人は、自分の事業なのに具体的な数字を把握していないことが多く、確定申告書も税理士に丸投げで何も自分で調べず確認もしていないケースが多いと言われています。これでは事業を丸投げしているようなもの。廃業して当然なのです。

こう考えると、融資は受けることができるものではありますが、『いくら借りられるか』ではなく、きちんと自分自身で数字を把握し、長期的な目線で考えたときに『月の返済はいくらか、ほかの固定費と合わせて支払いができるか』を考えなくてはいけません。

事業を続けることも融資を受けることも決して簡単ではなく、よく知らない人間が偉そうに語れるものではないのです。

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