見る目を養うことで見えてくるもの

様々な形で仕事をしていると、本当にいろいろな考え方の人がいるし、依頼の仕方もさまざまであるとよくわかると思います。そのたびに壁にぶち当たり、『じゃあどのように提案をし、見積を出し、提供すればいいのか?』ということを深く考えるようになります。経験を積むという意味ではこの工程は非常に重要であり、これを積み重ねていくことで経営者として・職人としての経験値が大きく変わると考えています。

ある程度経験していれば、何かあってもスムーズに対応できるし、お客様に対しても的確な返答をすることができます。これは会社・職人としての信頼性にも関わってきますし、自然と仕事自体にも表れてくると思っています。

遠回りでも自分なりに経験を積んでいくと、見る目も養われてきます。これまで仕事が欲しくて手当たり次第業者に営業をかけていた人は、今一度、営業をかけた先の業者について考えてみましょう。『仕事を取りたい』ということが先走り、営業した業者がどのような会社で、どのような施工をする会社であるか考えたことはありますか?

仕事をするにおいて、個人事業主で一人で回している人は特に、仕事量だけではなく『どんな業者と取引するか』もかなり重要になります。依頼元の予定ばかり押し付けられて、それにすべて合わせるばかりの仕事では、自分の予定も立てられない上に、空いているからと安易にほかの仕事を入れることもできず、効率がかなり悪くなります。

依頼元の都合に100%合わせていれば依頼元が助かるのは当然です。ただ、雇用ではなくあくまで取引です。個人事業主側もメリット・利益がなければ全くの無意味な仕事です。ちょっと工夫すれば予定などはお互いすり合わせて柔軟に決められるはずなのですが、結局面倒だからすべて下請けに帳尻合わせをさせる。そんなことをしているから本当に必要な職人を手配することができず、たまたま手が空いていたよくわからない人に頼み、2次被害、クレームになってしまうのです。

はっきり言って、段取りの悪い業者や予定を一方的に決めてくる業者と取引しても無意味でいいことはないと考えます。仕事をうまく組み合わせて回していくことが大切なのに、これでは邪魔になるだけ。いろいろな人を見ていると、自然と見る目が養われ、『この業者はちょっと深くかかわらないほうがいいかもしれない』『継続取引はしないほうがいいな』ということもなんとなくわかるようになってきます。

やり取りの段階でおかしいと思った業者は、仕事もずさんで荒いことが非常に多いです。段取りが悪いということは、毎回直前に依頼してきて、当たり前のように来させる可能性もあるし、腕が悪く、その尻ぬぐいをすべて押し付けられる可能性もあります。仕事が増えた分金額がもらえればいいですが、すべて人工作業としてまとめていいでしょ と、勝手に決められる可能性だってあります。わずかなやり取り一つでも、ここまでイメージすることもできるようになるのです。

経営をしていく上で、この判断力は、仕事をしていく上で必要な武器になります。個人事業主として働いていくためには、『誰と、どんな業者と関わるべきか』がとても重要です。

そう考えると、お互いがある程度信頼できる関係性を作れる取引先は簡単には見つかりません。そして、決して『取引先を作りたい』と思ってすぐに見つかるものでもないと考えています。果たして取引先を作ることが、自身にとって本当に必要でメリットあることなのかも考えた方がいいかもしれません。

仕事が欲しい、でも自社のブランディングもあるからある程度こだわりたい、でも生活するのに必要な金は稼がなくてはいけない 等、個人事業主は様々な葛藤と戦いながら仕事を取っていると思います。この様々なバランスを如何に取っていくかも技術と同じくらい意識すべきでしょう。

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