金額が安いと『本当に大丈夫なの?』と依頼しておいてしつこく聞いてくるくせに、腕が良くそこそこ高い業者には『そこまで完璧は求めてないからこうしてよ』と手のひら返し。人間不信になる件

ネットを通した受発注が普及してから特に増えているのではないかと感じるこの問題。一括見積では一度に複数の業者から見積を取れるので、その分金額も一気に比べることができます。だから余計にお客様からすれば『なぜこんなに金額に開きがあるの?』と思ってしまう。

なるべく安い費用で済ませたいから安い業者を選びたいけど、本当に大丈夫?怪しい業者とか詐欺なんじゃないのと勘ぐってしまう人は少なくありません。そしてダイレクトに業者に聞いている人もいます。

まず、法人か個人かでもだいぶ金額には開きが出ると思います。企業が大きいほど維持費も人件費もかかっているため、費用は高くなる傾向にはあります。個人でも安さを売りにしているのか、腕を売りにしているのかによって差も出てくるため、金額だけですべてを判断するのは時期尚早と言えます。

一括見積では施工方法も様々な提案となることが多く、施工方法の違いから金額に差が生まれている可能性もあります。施工方法によってほかの部材への絡み等もあれば手を付ける範囲も大きく異なります。小さな問題だから費用も安いはずと考えている人は少なくありませんが、作業の大きさ小ささだけで金額が決まっているわけではありません。施工をするにあたって材料以外の責任、アフターフォロー、施工する箇所の周りの絡み等様々なことから判断し見積金額は出されています。

職人として本当にストレスなのは、安さでご依頼をいただき、それに応えて施工しているにもかかわらず、施工の説明もした状態で依頼決定しておきながら『本当にちゃんとやってくれるの?大丈夫なの?所詮すぐダメになるんでしょ?』と度々聞かれるだけではなく、『もっとここはこうしてよ』と結果的に完璧を求められ、反対に腕で勝負し価格もそれなりにしていると、『完璧でなくてもいいから費用は押さえたいんだ、ここはこうしてよ』とどんどん一方的に言われること。何が何でも自分の思った形にしたいという気持ちはわかりますが、これでは見積の意味もなくなってしまう。様々な工程の絡みがあり、それで施工手順が決められているにも関わらず、『この施工を省いてよ』ということを言われたりもします。

施工する側は、お引渡しした後も、施工した箇所がおかしくならないような方法を考え、それでも何かあれば保証する という覚悟の元施工しています。(保証を付けている業者等)費用を抑えたいからと安易に工程を省くことで何か不具合が起こったら、だれが責任を取るべきなのか?そういった問題にもなり得るのです。何の説明もなければ施工業者が責任を取らねばならない。そういう厳しい環境下で職人は働いています。

お客様が住んでいる自宅は路駐が当たり前で全然警察も通らないから大丈夫なので、路駐で作業してくださいとお客様から言われ、安易に路駐して作業した結果、罰金となってしまったらどうなってしまうのか?お客様から言われたとしても、結果その職人の判断で決めたことなので責任は職人にあるのです。

結局施工する側、受注側は発言すること、決めたこと、実行することすべてに責任が発生してしまうのです。そういうことすべて考えて金額を出しています。職人にとっては金額=責任の重さなのです。

お客様目線で考えている職人ほど、なるべく安くしてあげよう、サービスしてあげようと思いがちですが、その優しさは果たして本当にお客様のためになる優しさなのか。今一度考えなくてはいけません。

商売をしていると、はじめは『安くても喜んでもらえれば』と思っていたのに、だんだんと安いままで完璧を求められ、挙句『所詮こんなもん』『客をなめるな』と言われてしまい、質を重視すると『高すぎる』『他はもっと安いけど?』と文句の嵐。商売人で病んでいない人なんているのだろうか?職人の世界だけでなく、どの職種にもいるとは思いますが、ああ言えばこう言う人間はごまんといます。経営者が病んでいくのが本当に理解できます。

ここまでくるとブランディングを確立することが大事なんだとようやく気付きます。『うちはこういうスタンス』とドーンと構えてしまう。すべてのお客様が満足する形なんて難しすぎるので、必要としている人に対して提供できるようにする。それがベストなのだと感じます。 腕、安さ、速さ、アフターフォロー、どんなことを売りにするのかはそれぞれ。それをお客様へわかりやすく示すことしかないのだろうなと感じます。 でも尚且つ売り上げも意識し、自分自身が生活できるくらいの収入は出さねばならない。本当に過酷です。何のためにこんなことやっているのだろうかと思ってしまう人もいるのではないでしょうか。

どれだけ努力しても、いろいろなことは言われてしまいます。日々こんな問題と直面しながらみんなそれぞれ努力し維持発展を目指しています。この経営者の複雑な感情をどのように説明し誰に相談すればいいというのか。だから経営者は孤独になっていくのだなと思うのです。

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