個人のお客様の依頼に対し、『個人は金額盛って見積出せるからおいしい』というアホ

タイトルの通り、業者の依頼に比べて個人のお客様の見積金額に対して『盛れるからおいしい』と言っている人は少なくありません。お客様が『どうせ高く見積もっているんでしょ』と業者に対して思っていることからも、個人のお客様にはある程度金額を乗せて見積を出していることは間違いありません。ただ、すごく勘違いしていると感じるのは、決して理由なく『盛っている』わけではないということ。そして、『盛れるからおいしい』と簡単に思っている人は、おそらくお抱えで人工仕事しかしたことがなく、書類上独立しているとしても、仕事の取り方は完全な『雇われ』であると思います。

お抱えの仕事でも責任は発生し、何かあれば対処しなければならないのは当たり前ですが、個人のお客様から依頼を受けるということは、すべての責任・決定を自分が行い、それに対する対価をいただくということです。何かあっても上司が助けてくれるわけではなく、すべて自分で対処していかなくてはなりません。大手が≪営業・見積・施工・引渡し・ご請求・アフターフォロー≫と分担していることを、すべて自分で行うということなのです。施工の時だけに発生する分だけではなく、見えない時間に行う様々な努力や労務、その他施工に対する保証・サービスなど含めた金額です。

よくお客様から『使ってる材料はどうせ同じなのに、なぜこんなに金額が違うのですか』と、あたかも悪意を持って金額を上乗せしているという発言をする方もいらっしゃいますが、施工は右から左へ物を流す仕事ではありません。職人の仕事はその場で作り上げる仕事。そしてすべての責任を負い提供する立場です。それを『雇用と同じ金額で十分でしょ・個人だから安くていいでしょ』というのは違うと思っています。会社それぞれサービスや仕事に対する考え方も異なります。金額が会社によって異なるのはある意味当然と言えます。

依頼してくれるように安い見積を安易に出し、施工中に予想以上に材料費や工期が足りなくなって『やっぱり足りないので上乗せで』という理由で果たしてお客様は納得してくださるのか? お客様は見積金額や内容で決めてくれているのに、後から後から足りない足りないとどんどん金額が増えていったら、果たしてお客様はどう思うのか。見積書はただ金額だけ伝えるための書類ではなく、ある意味契約書となる大切な意味を持つものです。その業者が施工に対してどのように考えているかもよく表れるものだと思います。足りなくなるということは、それだけ見積書が甘く、経験値も足りないのかもしれない、業者としては半人前だ という印象を与えてしまうことになります。

施工後、思ったようにいかない場合、依頼元がいれば現場責任者である人物がほかの業者を手配したり何かしらの対応をすることでお客様に対応しますが、直接依頼を受けている立場は自分が責任者。物を壊したり汚してしまったら、当然自分のお金あるいは損害賠償保険から賄わなくてはなりません。そういったリスクのある仕事の取り方であり、物事をわかっている人は決して『おいしい仕事』とは思わないと思います。背負う責任が重すぎるので。ものすごく精神を削られる働き方です。でも、腕で勝負し、強い思いがあるから続けているのだと思います。

こういうことをきちんと伝えている人も少ないのではないかと思います。だからどんどん勘違いされてしまう。決しておいしいから金額を乗せるのではありません。

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