業者からの人工作業の依頼と個人のお客様から直接依頼を受けることの違い

ネットでの受発注が増えてきたことにより、個人事業主もお客様と直接やりとりし、ご依頼頂くケースが増えています。個人事業主の働き方としては大きく分けると、業者の専属(お抱え)となり業務を進める方法と、個人のお客様から直接受注する方法、外注の3通りかと思います。


お抱え、専属の特徴としては、施工方法や作業の流れは大体同じであり、監督をはじめとする責任者から指示を受けて作業していきます。基本的にその現場の責任は当然責任者が負うことになります。とはいえもちろん何かやらかせば当事者もなんらかの責任を取らなければならない面も出てきますが、それでも通常は現場責任者ありきで現場が回っています。この働き方では職人として施工に集中することができます。

ただ、この為職人が『こうした方がいい、この方が丈夫になる』と思っても、責任者がNOと言えば従わなければならず、自由度が少ないと言えます。又、人工作業は1日の決められた時間内に作業を進めていく働き方です。もし施工難易度がかなり高い、もしくは1日で1人工以上こなしたとしても、『時間内にやったんだから1人工だろ』と言われる事も有り、腕の良い職人にとっては非常に割が悪い仕事となる可能性が高いです。でも定期的に仕事をもらってある程度お金が稼げるから…と、この働き方を選択している職人もいます


一方個人のお客様からの直接の依頼は、1人で経営している個人事業主の職人にとっては依頼内容=責任者=施工者であり、お客様へのご説明から工期の確認、お引き渡しの確認、見積もり金額の提示、交渉、請求書の作成、入金確認など全てを行わなければなりません。大手や会社が分担して行う仕事を1人で行うのです。

お客様は建築に詳しいとは限りません。専門用語がわからず、かなり噛み砕き説明する必要もあり、この場合では施工スキルだけではなくサービス業的な部分も必要になります。全責任を背負う代わりに、お客様と相談しながら自分のやりやすい方法で進めることができ、そういった意味では自由度は高いと言えます。ただ、お客様は『完成して当たり前』で勿論依頼していますし、依頼前よりも良い状態になると期待をしており、かなり神経を使う作業にはなります。依頼頻度も不定期でお客様次第になることが殆ど。安定した受注を目指すためには、いかに見込み客を見つけ、コンタクトを取るかも考えなくてはいけません。

ただこの方法なら、ブランディングを崩すことなく続けることができ、腕で仕事を取る事の鍛錬にもなり、職人としてかなりの経験を積むことができます。自然と経営者としての経験も積め、たとえ個人事業主でも看板背負った会社として成長する為の大切ないろはを学べると感じます。

よく問題になるのが、お抱えなどで仕事をしている職人が、個人のお客様の依頼を受けたところ、大クレームになるということ。新築工事などでお客様がまだ住んでいない状態だと、場合によっては養生を最小限に抑えて、とにかく数を潰すよう指示を受けることがあります。この作業に慣れてしまい、そのままお客様のお宅で施工してしまうパターンです。
お客様の自宅には当然御家財が置いてあり、大切なものが置いてある可能性もあります。本来は必要以上に気を遣い養生を張り巡らすのが普通なのですが、それをきちんと考えていない結果招いてしまったのです。中には工事現場内の内履きとして履いているスニーカーでお客様のお宅をズカズカ歩いている職人も…。それでは床に傷がついてしまいます。この現場環境による違いをはっきり区別すべきなのです。


果たしてお抱えや外注と同じ金額でお客様のご依頼を受けて良いのか?たとえ安くてもお客様は『安いししょうがないよ、それでいいよ』なんて言ってくれる人は残念ながら多くはありません。安くしたからって責任の重さは変わりません。『人工作業ではいつもこうだから』という理由も通用しません。ここでは誰もフォローも助けてくれる人もおらず、何があっても自分で解決しなければなりません。そういった見えない仕事、労務が非常に多くなる働き方です。そもそも安くすることがお客様の為になるのかも考えなくてはいけません。
依頼を受けるも断るも自分の責任。そんな様々な事と向き合い、個人事業主は日々働いています。

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