お抱えというものの勘違い

個人事業主で、何社かのお抱えになり仕事を回していく という働き方を選んでいる人は多いのではないでしょうか。1回の依頼で1か月~数か月こもりきりになる仕事もあれば、1日~数日で終わってしまう仕事もあり、業種や依頼内容によって仕事の回し方は大きく異なります。

仮に1社のお抱えになり、1回の仕事も数か月単位の仕事が殆どの場合、きちんと腕があり信用されていれば次の仕事もある程度確保するよう依頼元も努力してくれているようです。曜日固定などの外注なども、その曜日にはその仕事のために空けておく という契約なので何とか営業が仕事を探して見繕ってくれます。

問題は1回の依頼が1日から数日で終わるような仕事の受け方をしている業種です(外注は除く)。数日で依頼が終わってしまうということは、工期が数か月単位の業種に比べてやりくりをものすごく工夫しなければならないということ。仕事がないからといってあちらこちらに営業をかけて、閑散期にはそれで良くても、もし指定日がかぶってしまいどちらかを選ばなくてはいけなくなったら?断られた方は『そっちから頼んできたくせに』と思うでしょうし、信頼がその時点で失われてしまいます。腕が良くても信頼がなければ仕事は回ってくることはなくなります。信頼を失わないような仕事の取り方を考え、生活できるくらいの収入を得られるよう工夫し、尚且つ自分のブランディングを保ち経営していく。個人事業主はこのようなことを考えながら毎日必死で生きています。これで3年、5年、それ以上続けてられることは本当にすごいことだと思います。

ただでさえ個人事業主は守られていない立場で、誰も助けてはくれません。仕事がなくて困っている時に『うちにおいでよ』などと甘い言葉をかける業者は、奴隷として使おうとたくらんでいる人が殆ど。単価もこちらの意見なんてお構いなしでしょうし、ただの雑用係にされる未来しかないのです。

取引先が1社の場合にも注意が必要です。『うちが断れば困るのは目に見えている』と依頼元が舐めてくるようになったら、どんどん単価を下げられ、いいように使われ、仕事が欲しいと言っても『今は仕事が薄いんだよね~ごめんね』という簡単な一言で断られてしまう。こっちが困っていようがつらかろうがお構いなし。でも依頼元が困っていたら無理にでも来させようとするし、夜遅くなっても働かせようとする。そんなことにもなりかねません。

依頼元で多いのが、数か月~1年に数回、1日程度の仕事の依頼をしてくる業者で、そもそもいつ依頼してくるかもわからず、見積出しても依頼確定するかもわからないのに、なぜかピンポイントの日にちを指定し、『前にも依頼してやったんだから来れるよな?』という上から目線で言ってくる業者です。組織として複数人でやりくりしている会社に対してならまだわからなくもないですが、個人で一人でやりくりしていると知っててこのようにほざくバカ。こんな業者には突っ込みどころが満載です。

そもそもお抱えのつもりでいるなら、あんたの依頼だけで十分に賄えるくらいの仕事を回すとか、まずそちらの裁量を見せてください

こっちが頼んだわけでもないのに当たり前のように指示してくるけど、じゃあうちが困っている時に必ず仕事を回してくれたり助けてくれますか???

こんな自分のことしか考えない業者は、ほぼ100%助けてはくれません。というより、こんな依頼の仕方もわからないような業者が会社を何年も続けているなんて、業者として本当に恥ずかしい。そして、こんな年1,2回の依頼しかしてこないのに指定が多いなんて、はっきり言って迷惑です。困っているから依頼をしてくるはずなのに、なぜか『依頼してやってる』と思ってしまっている。大きな勘違いです。こうなってしまうのも、結局は個人事業主が仕事を取って回していくことが大変なことだと知っているからです。

独立して間もなかったり、なかなか仕事に繋がらず悩んでいる人は、この餌食になりやすいのです。これでは自分が思い描いた形での仕事はできないし、独立した意味もなくなります。だってただのパシリであって、仕事のやりくりや本当の意味での経営をせずに、依存してしまっている形だから。

結局腕に自信がなかったり、誰かに頼って何とか仕事を回してもらいたいという思いがあると、必ず業者は漬け込んできます。そうならないためには自分の仕事の強みをはっきりわかっていて、腕にも自信がなければ正直生きていくことは難しいかもしれません。職人としての誇りがあり、きちんと引き渡すことに絶対的な自信があり、一人前の職人を目指している人は、みんな苦しみながら葛藤し、続けていると思います。

もちろん、本当に信頼関係を築ける取引先に出会えたら、そういう存在は大事にすべきでしょうし、相手も大事にしてくれると思います。ただ、そういう業者はそもそも無理に囲おうとしないですし、群れない印象です。

お抱えを作ることが正解、お抱えがいないのは腕がない証拠など言われがちですが、お抱えを作ることが必ずしも正解とは限りません。お抱えに依存している方がむしろ危険だと感じます。だって、そのお抱えがこの先何年も自分を使い続ける保証はどこにもないし、その会社自体が存続し続けるかもわからないんですから。『お宅から依頼がなくなろうがつぶれようがうちは別に困らないけど?』くらい言い返せるようになってもいいのかもしれません。自分の会社は自分のものであって、お抱えが賄っているのではなく、自分が成り立たせるべきものです。

一昔前までは終身雇用が当たり前な時代でしたが、月日が変わり、今では副業OKのケースも増えたことにより、働き方も多様になってきています。囲われる時代からも変わってきていると言えます。言い方を変えれば、腕と信用があればのし上がることができる時代とも言えるのではないでしょうか。ネットの普及も急速に進み、一括見積サイトの類も増えました。それらをうまく活用すれば、個人事業主もうまく仕事を組めるし、依頼者も必要な時に必要なだけの依頼ができるのではと思うので、これが定着すれば全体的な効率が上がるような気がするのです。(当サイトの営業・宣伝をしているつもりはないのですが、純粋にそう感じています)

お抱えを作るにおいて、業者選びは非常に大事かと思います。仕事がないからと安易に受けて本当に大丈夫なのか?どのように利用しようと考えてうちを囲おうとしているのか、のちのち経営していくにおいて邪魔にならないか?足枷にならないか?これがいわゆる駆け引きなのでしょう。取引先1つ作るのも、いろいろなことを総合的に判断して作るべきであって、ちょっと優しそうだから、仲良くなれそうだからという安易な理由では自分がつらくなるだけです。自分がどのようなスタンスで仕事をしていきたいのか。じっくり考えてみませんか。

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