『個人事業主なんてただの派遣だろ?』というありえない偏見

今回の内容は、タイトルの通り、個人事業主をただの派遣と思っている方が大変多いため、お題とさせていただいております。『そうなんだ、知らなかったな』と思う人はいいのです。問題は派遣だなんだと見下す人がいることに個人事業主は不快な思いをして困っております。働き方も多様になってきて、こんなことを言っているようでは、自分の無知を露呈しているようなもの。個人事業主にかなり失礼です。そして、個人事業主や経営者からは陰で笑われていることを自覚なさった方がいいと思います。

このようなイメージになったのも、個人事業主はかなり自由だと思われているからなのだと思います。ほかのページにも記載しましたが、

  • 自分で金額を決められる
  • 働く日も自分で決められる
  • 高い金額にして自由に遊ぶ時間を作れる
  • 遊ぶ金をすべて経費にできる

世間ではこのような印象を持っているようです。いったいどこから説明すればいいのやら。

自分で金額を決められる ・高い金額にして自由に遊ぶ時間を作れる

『自分で金額決めれるんでしょ?ぼろもうけじゃん!』と言ってくる人は本当に多くいます。じゃあ自分で決めて仕事してみたら?それがどれだけ過酷なことなのか知らないでしょう?

まずどのようにして金額を決めるべきなのか。『このくらいでいいっしょ!』と適当に決めているわけではございません。実際の施工に対して必要になる材料、人件費のほか、金にならない事務作業や営業活動などの労務費なども含め、さらにはお客様から見た施工の『価値』も踏まえて金額を出さなければならない。これって実際にやると大変難しいことです。しかも、見積書というのは、『この金額でうちは施工をし、きちんと引き渡せます』という意味を持ちます。ある意味契約書になるのです。それを『このくらいでいいっしょ!』とは何事でしょう。

例えば安易に見積書を作成し、それで受注となりました。施工していたら明らかに材料が足りなくなりました。『材料が足りないので金額が上乗せになります』といってお客様は果たして納得するのか?業者から見れば必要だから乗せたいのだろうけども、お客様からすれば、『この金額だから受けたのに話がちがう!詐欺だ!』という印象を持ってしまいかねないのです。それを避けるため、保険を掛け『上乗せされる可能性がある』『概算なので請求額は変わります』と事前に伝える業者もいます。それで納得してくれるのならいいでしょうが、一体最終的にいくらになるのかわからないお客様からしたら恐怖でしかないのです。まして施工してしまっていて、確実に請求されたら払わなければならない立場。 こんなことがあるから施工後のトラブルが絶えないのかもしれません。

金額はそのように施工におけるあらゆる可能性を考慮して出しているものであって、お遊び感覚ではないのです。もちろんバイトや派遣のお仕事も、何かやらかしたら弁償なり時給下げられたりといったこともあるかもしれませんが、そもそもの責任の重さが違いすぎるのです。損害賠償の問題になった場合、雇用されていればある程度会社が助けてくれますが、個人事業主は賠償保険の加入も含めてすべて自分で賄わなくてはなりません。これで信用が一気になくなれば仕事もなくなります。これのどこが『派遣』なのか。自分自身の腕と信用で仕事を取り、依頼が来るような会社に育てなければならない立場がなぜ『派遣』なのか。本当に疑問なのです。

働く日も自分で決められる

厳密には自分で決めているわけではなく、依頼元やお客様からの希望によるところも大きいのです。そのような『いつ依頼が来るかわからない状態』のものに対してうまくかじ取りをし、予定を組み立てていくのが個人事業主です。ただ勝手に自分だけで『この日は出るからこの日は休み!』と決めているわけではありません。(外注など曜日固定などで働く業者を除く)

必ず自分が仕事が欲しいタイミングで仕事にありつけるとは限らないのです。ここで外注などとして固定で確実に収入が見込める働き方を選択する人も出てきますが、こうなると自分のブランディングを守れなくなる可能性の方が高い。だから本職とは関係ない単発のバイトなどでやりくりし、何とか生計を立てようと考える人が出てきます。バカにされるし見下されるし、色眼鏡で見られるし当事者でないとわからない苦しみと戦うことになるのです。これのどこが『自分で決められて良いね』なのか。腕だけで食っていくということは様々な苦痛に耐えていくつも妥協し、禿げるくらい考え行動していくこと。これがどれだけのことか。『会社が仕事くれるからいいや♪』と甘えたことをいうような人には言われたくないのです。

遊ぶ金をすべて経費にできる

これも間違った解釈をしている人が多いのです。個人事業主は白色申告か青色申告で確定申告をしています。事業で使った材料費は経費とすることができるのですが、ここで雇用されている方がそろって勘違いをしているのが、

『使った経費は戻ってくる。だから全部経費として落とせばいい』

と思っていることです。例えば社員やバイトは『領収書渡して。後でその分振り込むから』と言ってくれる会社が多いと思います。会社が負担してくれるのでその人個人には使った分戻ってくる。でも、個人事業主は経費を使っても戻っては来ません。というか、雇用されている人には返ってきても、その分会社が負担しているのであって『戻ってくる』という解釈自体が間違いなのです。

そもそも事業で使った分としての金額が所得税の計算に含まれないというだけにすぎず、このあたりを誤解している人が実に多い印象です。使ったもんすべてを経費にできるわけではないのです。細かく言えば、国保や税金関係は経費にはならないし、スーパーの食材も経費にはなりません。税金対策のために全部経費とすれば、確かに税金の額も低くなります。今の生活を続けるつもりならいいかもしれませんが、例えば住宅ローンを組みたい、事業融資を受けたいという場合、そんな確定申告を見せても、専門家が見たらすぐにバレます。そして住宅ローンも事業融資も受けられません。そのような人が多いから、『個人事業主は住宅ローンが通りにくい』と言われるのだと思います。きちんと税金を滞りなく納め、多少間違いがあったとしても税金逃れのためではない確定申告書を作っていれば、個人事業主だから通らないということはないのです。

そんなこんなで様々なことを考えながら個人事業主は働いているのです。たとえ1人でやりくりしていようが、立派な経営者なのです。

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