どこまで事業主として追求するべきか

個人事業主に限らず、新たに始めたり立ち上げたりすることに対しては少なからず周りからの風当たりは厳しく心無い言葉を言われることも多いと思うし、何年も続けている人は、みんなそのような経験を経ているのではないかと思います。

作業に関しても決まりごとに関しても、改善した方がいいかもしれないと思う時というのは、経験者の経験に基づく助言があった時か、あるいは何らかのトラブルにあってすごく悔しい思いをした時だと思います。

『安くても喜んでもらえればいいんだ』『これで仕事をいただけるのだからありがたい』と思っていても、必ずしもいい結果に繋がるとは限りません。決まり事も何もなく、ただの口約束で安易に仕事を受けた場合、それを利用してくる人もいるし、どんどん無理難題を要求をしてくる人もいます。『仕事ないんでしょ?』とストレートに聞いてくる人もいます。

仕事がないことと無理難題を押し付けることは全くの別問題ですが、お客様よりも明らかに若い場合や、腰が低い場合には色々言われることは結構あります。で、結局本来の責任以上のことをすべて押し付けられてしまう場合もあります。

そうなると改めて会社の決まりごとの必要性を意識するようになります。じゃあどこまでしっかり決めればいいのか?

提供するもののレベルは?労務や材料費など経費合わせていくらになるのか?職人としてその金額は妥当か?お客様から見たらどうだろう?この金額の中の内容(施工スキル以外の保証やサービスの充実度)はどうか?見積書に期限は設けようか?依頼確定してからのキャンセルはどうすべきか?会社として考えると、キリがないくらい決めるべきことばかり溢れます。

安さを求めたお客様の中には、施工当日で職人は移動中だというのに『もっと安い所見つけたからそっちにしますね。ごめんね~』と簡単に言われて終了。というパターンも時たまあります。予め『当日のキャンセルはご料金が発生します』等を伝えていなければガソリン代すら請求できません。いくら『喜んでいただくための仕事』でも、これでは採算が取れなくなってしまいます。

こういった度が過ぎる困りごとを減らして、スムーズに取引するためには見積書や決まり事って本当に大事だと思っています。大きな企業でも小さな会社でも、長く営んでおられるところは大抵本がつくれるのではなかろうかというレベルで決まりごとを設けていることが多い印象です。それだけいろいろなことを経験してきて、それを活かして成長できたから長く営んでいけるのだろうなとも思います。

ただ、個人事業主は法人や大企業と比べてお客様との距離感が近い(法人や企業の場合、営業、施工など分担されているのに対し、1人で営んでおられる事業主は特にお客様と直接やり取りするなど最初から最後まで密に関わる)し、法人のやり方にあまりに寄せてしまうと個人事業主ならではの良さが薄れる気もします。

本来は法人よりも自由な立場ですから、もっと砕けた感じで気軽にお客様と関わってもいいのかもしれませんが(もちろん腕ありき)、結局トラブルになった時に責任を背負うのは自分自身であり、自分ですべて対処しなければならない立場。最初ニコニコしていても、トラブルになったら問答無用ですべて業者の責任になることだってある。お客様から直接依頼を受けるということは、そんな状況下に身を置いて仕事を取るということ。

そう考えると、仕事を取ることって結構怖いことだと思いませんか。

人づきあいが得意な人や世渡りがうまい人はあまり悩まない問題かもしれません。

技術面ではない経営面で個人事業主はどこまで追求すべきなのか。個人事業主は技術の提供だけしているイメージを持たれていますが、案外見えないところで考えていることって結構あると思います。どんな提供をするのかにもよると思うし、経営者の考えにもよると思うし、性格にもよると思います。

まとめの言葉が思いつきませんが、それぞれの考えを持った個人事業主の職人様が集まることで、『こんな会社もあるんだなぁ』とお互いに思えたらいい刺激になるんじゃないかなぁと思っております。SNSで昔よりも様々な職人を見つけることもできるようになったので、悩んだらほかの職人さんの仕事や思いを見聞きすると、何か気づきがあるかもしれません。

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